日本の文字

【文字】
世界の文字はすべて絵を起源としており、絵文字の代表的なものがメソポタミアのシュメール文字(楔形文字)・エジプトの象形文字・中国の甲骨文字であり、日本の文字は中国の甲骨文字に強く影響を受けて発展したものです。
古事記・日本書紀以外に神話を伝える「古史古伝」に「神代文字」があったとされていたが、漢字渡来以前に日本固有文字は無かったとする説が一般的です。
その後、中国伝来の漢字は日本独自の変遷(万葉仮名・平かな・片かな・国字など)を経て現在に至っております。

内            容




成立
象形文字の例ひらがなの字源カタカナの字源
漢字(画像拡大)ひらがな(画像拡大)カタカナ(画像拡大)




変遷
漢字の変遷ひらがなの変遷カタカナの変遷
漢字(画像拡大)ひらがな(画像拡大)カタカナ(画像拡大)
【国字】
日本で独自に作られた「和製漢字」
国字
【万葉仮名】
中国渡来の漢字で国語を表記するもので「音仮名」「訓仮名」がある
【平仮名】
万葉仮名の草書体「草仮名」をさらに簡略に書き崩した文字
画像の説明
【片仮名】
仏典や漢文を訓読する場合に「訓点」を書き込むためにうまれた
【訓点】
「白文(元の漢文)」を「訓読」(日本語の語順の合わせて読む)ための符号画像の説明
国字一覧(画像拡大)万葉仮名(画像拡大)訓読(画像拡大)




漢字の知識
書体(フォント)
書体(フォント)
主な書体

主な書体
区切記号
区切記号
「踊り字」(畳字・重字)
:漢字の場合
ゝ〈:仮名の場合
書体一覧(画像拡大)主な書体(画像拡大)区切記号(画像拡大)
異体字
異体字
文字コードとは

文字コードとは
各種文字コード
各種文字コード
主なコード
Unicode(国際規格)
ShiftJIS(日本規格)
JIScode(日本規格)
異体字(画像拡大)文字コードとは
(画像拡大)
各種文字コード
(画像拡大)
象形文字
字源
字源辞書
字源辞書
幸運象形文字
幸運文字
字源(画像拡大)字源辞書(画像拡大)幸運文字(画像拡大)




組合せ(構成)
部首部首例
部首(画像拡大)部首例(画像拡大)
誤字(嘘字(うそじ) 訛字(かじ)
JIScodeの場合
口:説文解字(意符)
天:形声文字(音符) 
読みちがいやすい文字
一切×いっせつ
   ○いっさい
一斉×いっさい
    ○いっせい
部首で意味が変わる
「亡」(つくり)
   (いそが)しい
「亡」(かんむり)
   (わす)れる
大画数文字
大画数文字
全く使用されない
(「大漢和辞典」でも16画X4ケ=64画)が最大
龍x4
読み:てつ
印鑑書体
印書体
隷書体:始皇帝時代以前から使われており、
竹簡・木簡に文字を記録していく過程で
逐次整理・簡略化された結果と思われる
字体差表
字体差表
行書:紙が普及しだし
    隷書の早書き用
草書:行書をさらに
    早書き用に使用
楷書:くずし字の草書
    は読みづらく、
    隷書を簡略化
    したもの
(りゅう)」(16画)X9=144画印鑑書体(画像拡大)字体差表(画像拡大)
漢音・呉音の発音
漢音呉音
漢音:一般の漢籍を読む
    場合
呉音:仏典を読む場合
梵字
悉曇文字・サンスクリット
梵字
塔婆などに描かれる
般若心経
般若心経
呉音で読まれる
漢音・呉音の発音梵字 基本梵字(拡大)般若心経(画像拡大)
















漢字の由来

日本漢字検定協会
講座テキストより
蟹 
(辺)+(冠)+(足)
 「解る」「虫」ではない
 (刀で牛の角や体をばらす)
:(古中国の小動物総称)

類似文字:流言()(ゴキブリ)語

籠の鳥
+
:門の半分
:ふるとり
  (鳥の象形字)

自由に飛び回る鳥が
籠の中に入れられる
    
  宮仕えの辛さ
正義 
+
一:□→■→一
止:「歩」の略字(前進)
□:「土地」の征服
征服:正当さ、正義

類似文字:武 政 整
日本列島 
日本:(新字)
中国:國の異体字逆輸入
(王は新体制に不一致)

國の異体字: 𡈁
ハート 
(冠)++(足)
爫:「旡」溜息姿(象形字)
夂:足を引きずる意味

類似文字:疑 曖
三枚葉 
(冠)+(足)
:葉の古字体
   薄く平たい言葉
世:三枚の葉の枝
  生(セイ)に通ず

類似文字:(かれい) 蝶
鮨 (すし)
元は旨い魚を塩やヌカに漬けたものの総称
 ↓日本に入って来て
すし」←酸(す)しの物

(辺)+(旁)
旨:ヒさじ(さじの象形字)
日:の変形文字
樹木 
(元の字)
上部「廿」:燃える形
下部「文字の下部」:矢の意
黃:火矢火矢の形取字
   ↓
=+
秩序へ反逆:横行・専横

+
(辺)⇒(辺)
連なって細長く伸びる
    
戦乱時の貴族と民衆の姿



動画を見ながら般若心経を唱えてみましょう

【真言】(マントラ 呪文 まじない)
 羯諦羯諦、波羅羯諦、波羅僧羯諦、菩提薩婆訶。(ぎゃーてい ぎゃーてい はらぎゃーてい はらそーぎゃーてい ぼうじそわか) 合掌
【現代語訳】
往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に正しく往ける者よ、 菩提よ、
ささげ物を受け取り給え


【日本語のリズム(拍子)】
三河岳精会ホームページの「詩吟ミニ講座」⇒日本語の発音?に記載した「二音一音節」の原則について、もう少し掘り下げて説明します。
前述の古事記・日本書紀の最初に出てくる歌は「八雲立つ」です。「古今集」序に「人の世となりて素盞鳴尊(すさのをのみこと)よりぞ三十字あまり一文字よみける」とあり、”女とすみたまはむとて、出雲国に宮造りしたまふ時に、その所に、やいろの雲のたつを見てよむ”
八雲立つ 出雲八重垣 妻ごめに
            八重垣つくる その八重垣を

歌とは元来、歌われるもので、「詠う」ものと「語る」ものの二通りがあると云われ、五音と七音の組合せによるリズム(律動・拍子)が発生し、それは主に四拍子である。
「二音一音節」の原則に従い、●印ヶ所(音符:休止符 詩吟:節調・間合い)で補足して一音節にします。

音符


二音拍
画像の説明画像の説明画像の説明
ヤク|モ●|タツ|●●イズ|モ●|ヤヘ|ガキツマ|ゴメ|ニ●|●●
画像の説明画像の説明
ヤヘ|ガキ|ツク|ル●ソノ|ヤヘ|ガキ|ヲ●

前述の唱歌「ふるさと」は七五調ではなく六四調で三拍子ですが、体になじんだ基本リズム(内在律)の「二音一音節」にしてしまいます。

音符


二音拍
画像の説明画像の説明
うさ|ぎ●|おひ|し●|かの|やまこぶ|なつ|りし|かの|かは
六四調うさぎおひしかのやまこぶなつりしかのかは

先に「歌とは元来、歌われるものであった」と言いましたが、歌謡の半分は「文学的」ですが他の半分は「音楽的」なものです。詩吟は「語りもの」ですが、良否は別として最近では音楽的要素が強くなり、しかも舞踊とともに三位一体となり芸術の域に近づいています。しかし伝統をしっかり踏まえることが大事なことです。


【詩歌】
詩吟では漢詩の他に、和歌(短歌)・俳句なども詠いますが、ともに日本の言霊(ことだま)信仰を基に口承文学(古代歌謡:歌体は五音・七音)が誕生し、後に和歌・俳句へと発展していきます。
【和歌】いわゆる三十一(みそひと)文字(⇒五・七・五・七・七)といわれる形式の歌体

●●●●●○○○○○○○●●●●●○○○○○○○○○○○○○○
発句(上の句)脇句(下の句)

歌枕(うたまくら):特定の連想を促す地名(※枕詞と混同しないこと)
契りきな かたみに袖を しばりつつ 
              末の松山 波越さじとは

枕詞(まくらことば):主として和歌に見られる修辞で、特定の語の前に置いて語調を整えたり、ある種の情緒を添える言葉のこと。
天離る に五年 住まひつつ
             都のてぶり 忘らえにけり






歌枕地図
歌枕地図・東北部歌枕地図・西南部
西南部地方←画像拡大東北部地方←画像拡大
例歌青文字の歌枕は画像表示ができます
末の松山:契りきなかたみに袖をしばりつつ末の松山波越さじとは(清原元輔)
白河の関:都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関(能因法師)
勿来の関:吹く風を勿来の関と思へども道もせに散る山桜かな(源義家 )
姥捨山:わが心なぐさめかねつ更科や姥捨山に照る月を見て(詠み人知らず)
筑波山:筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞ積もりて淵となりぬる(陽成院)
田子の浦田子の浦ゆうち出でて見れば白妙の不尽の高嶺に雪は降りける(山部赤人)
箱根:箱根山双子の山を秋深み明け暮れ風に木の葉散り交ふ(曽根好忠)
小夜の中山:東路の小夜の中山なかなかに何しか人を思い初めけむ(紀友則)
不破の関:人住まぬ不破の関屋の板庇荒れにし後はただ秋の風(藤原良経)
近江の海:夕波千鳥汝が鳴けば情もしのにいにしへ思ほゆ(柿本人麻呂)
伊勢の海伊勢の海の海人の釣縄うちはへて苦しとのみや思ひわたらむ(詠み人知らず)
八橋ら衣つつなれにしましあればるばるきぬるをしぞ思う(在原業平)



万葉集 日本人の心の原点・故郷ともいうべき、現存する最古の壮大な和歌集。「何時出来たか」もはっきりしない。
天皇・皇族・貴族・下級役人・僧侶・漁農民・遊行女婦・乞食者など多様な作者による和歌約4,500首を全二十巻に収めてある。短歌:約4,170首、長歌:約270首、旋頭歌:約60首、仏足石歌:1首







歌の性格
区分名   称内         容

分類
長歌
短歌
旋頭歌(せどうか)
仏足石歌
五・七を繰返し七音。殆どは反歌(短歌)を伴う
五・七・五・七・七の五句(三十一文字)和歌の主流
五・七・七(上三句)五・七・七(下三句)
五・七・五・七・七・七の六句。薬師寺仏足(一首のみ)
部立雑歌
相聞(そうもん)
挽歌
宮廷儀礼・旅・自然を詠む公的な歌
男女が互いに交わす恋の歌
死者を悼む歌。葬送の際に歌われた


様式
寄物陳思(きぶつちんし)
正述心緒(せいじゅつしんしょ)
比喩歌(ひゆか)
羈旅歌(きりょか)
東歌(あずまうた)
防人歌(さきもりうた)
想いを天然自然の物象よせて表現した相聞歌
直接的に感情を表現した歌
想いを自然の物象にたよえて表現した歌
旅先での想いを表現した歌。安全祈願の歌もある
東国地方の歌
北九州防衛の東国出身の兵士・家族の歌

第一部:巻一~巻十六 年代順に配し雑歌・相聞歌・挽歌に分類されている
第二部:巻十七~巻二十 大伴家持の記録的な要素が強く、内容分類はない

内     容例   歌
第一すべて雑歌。雄略天皇、舒明~元明天皇の時代まで天皇代ごとに配列。宮廷歌が多い春過ぎて 夏来るらし 白栲の
衣乾したり 天の香具山(持統天皇)
第二巻一と同じ時代・配列。相聞歌・挽歌を収録。巻一・二が万葉集の基本形鴨山の 磐根し 枕けるを かも知らにしと妹は 待ちつつあらむ(柿本人麻呂)
第三第三巻以降、天皇代の標はなく部立ごとに配列
赤文字は「新古今集」との違い
田子の浦 うちいでて見れば 真白にぞ 不尽の高嶺に 雪はふりける(山部赤人)
第四すべて相聞歌。大伴家持と女性たちの贈答歌。天平16年頃までの歌君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く(額田王)
第五すべて雑歌。大伴旅人・山上憶良の歌が中心。大野山 霧立ち渡る わが嘆く 息嘯の風に 霧立ちわたる(山上憶良)
第六すべて雑歌。年代順に宮廷歌(行幸・遊宴歌)を収集み吉野の 秋津あきづの宮は 神柄かみからか 貴かるらむ(笠朝臣金村)
第七作者未詳の雑歌・比喩歌・挽歌を年代順に収録。旅の歌が多いあしひきの 山川の瀬の 鳴るなへに 弓月が嶽に 雲たちわたる(柿本人麻呂)
第八春夏秋冬の季節ごとに雑歌・相聞歌を収録。作歌年代は幅広いが天平年間の歌が多いあしひきの 山桜花 日並べて
かく咲きたらば いと恋ひめやも
第九雑歌・相聞・挽歌。旅と伝説の歌が多い。柿本人麻呂・高橋虫麻呂など個人歌集勝鹿の 真間の井を見れば 立ち平し 水汲ましけむ 手児奈し思ほゆ(高橋虫麻呂)
第十春夏秋冬の季節ごとに雑歌・相聞歌を収録。作者未詳の歌が多い。作歌年代は不明朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど
夕影にこそ 咲きまさりけれ(作者未詳)
第十一恋の歌の往来を収録。作者不明の歌が多い。旋頭歌・正述心緒・寄物陳思・問答・比喩に分類難波人 葦火焚く屋の 煤してあれど 己が妻こそ 常めづらしき(作者未詳)
第十二作者不明の歌が多い。分類に「羈旅発思」が入り、旅の悲別・問答歌が加わったたらちねの、母が呼ぶ名を、申さめど、道行く人を、誰れと知りてか(作者不明)
第十三>長歌集。宮廷の詞章・地名を含む歌が多い。雑歌・相聞・問答・比喩・挽歌に分類。思ひやる すべのたづきも 今はなし 君に逢はずて 年の経ぬれば(作者不明)
第十四総題「東歌」とした巻。東国民謡を集め作者不明の歌が中心。国名明否を分類松が浦に 騒ゑ群立ち ま人言 思ほすなもろ わが思ほすのすも(作者未詳)
第十五「遣新羅使人たちの歌」と「越後へ配流された中臣宅守と留京の妻との贈答歌味真野に 宿れる君が 帰り来む 時の迎へを 何時とか待たむ(狭野茅上娘子)
第十六伝説歌・民謡などを収録。詠み手は宮廷歌人から乞食者まで安積香山 影さへ見ゆる 山の井の 浅き心を わが思はなくに(作者未詳)
第十七以下四巻は大伴家持の歌を中心に日付順に配列。越中国守時代の贈答歌馬並めて いざ打ち行かな 渋𧮾の 清き磯廻に 寄する波見に(大伴家持)
第十八第十七巻に続く。奈呉の海に 舟しまし貸せ 沖に出いでて 波立ち来くやと 見て帰り来む(田辺福麻呂)
第十九第十八巻に続く。家持が少納言に遷任し帰京した頃の歌が中心春の野に 霞たなびき うら悲し この夕かげに 鶯鳴くも(大伴家持)
第二十家持が在京中の贈答歌・宴席歌。移り行く 時見るごとに 心いたく
昔の人し 思ほゆるかも(大伴家持)

【地名の由来】
愛知県:桜田(さくらだ)へ、(たづ)鳴き渡る、年魚市潟(あゆちがた)
     潮干(しおひ)にけらし、鶴鳴き渡る
(高市黒人 第三巻)

歌碑
歌碑地図

年魚市(あゆち) ⇒ 愛知(あいち)
現在の名古屋市南部から知多にかけて広がってた干潟         






参考:万葉集入門
百人一首 美しい日本の民族遺産
天智天皇~順徳院に至る百人の歌人から一首ずつ計百首を集めた歌集で、撰者は藤原定家であるが、後世の人が補修したとするのが通説。奈良・平安・鎌倉の三代に亘り、いずれも勅撰集に収められた歌である。部立別では「恋」の歌が43首と圧倒的に多く「秋」の歌が16首でこれに次ぐ。

 ↓「かるた」が表示されます(青数字のみ)

作  者出典歌集
001秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
我が衣手は 露にぬれつつ
天智天皇
(無名農民?)
後撰集
002春過ぎて 夏来にけらし白妙の 
衣ほすてふ 天の香具山
持統天皇新古今集
003あしひきの 山鳥の尾のしだり尾の 
長々し夜を 一人かも寝む
柿本人麻呂拾遺集
004田子の浦に うちいでて見れば 白妙の 
富士の高嶺に 雪はふりつつ
山部赤人新古今集
原歌田子の浦 うちいでて見れば 真白にぞ 不尽の高嶺に 雪はふりける万葉集
005おく山に 紅葉ふみわけ なく鹿の
声きく時ぞ 秋はかなしき
猿丸大夫古今集
006かささぎの わたせる橋に おく霜の
白きを見れば 夜ぞふけにける
中納言家持新古今集
007天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも
安倍仲麿古今集
008我が庵は 都のたつみ しかぞすむ
世を宇治山と 人はいふなり
喜撰法師古今集
009花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
小野小町古今集
010これやこの 往くもかへるも 別れては
知るも知らぬも 逢坂の関
蝉 丸後撰集
011わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと
人にはつげよあまのつり舟
参議 篁古今集
012天津風 雲の通ひ路 吹きとぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ
僧正遍昭古今集
013つくばねの 峰よりおつる みなの川
恋ぞつもりて 淵となりぬる
陽成院後撰集
014陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
乱れそめにし われならなくに
左大臣古今集
015君がため 春の野に出でて 若菜つむ
我が衣手に 雪はふりつつ
光孝天皇古今集
016立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとしきかば 今かへり来む
中納言行平古今集
017千早ぶる 神代もきかず 龍田川
からくれなゐに 水くくるとは
在原業平古今集
018住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
藤原敏行古今集
019難波潟 みじかき芦の ふしの間も
あはでこの世を 過ぐしてよとや
伊 勢新古今集
020わびぬれば 今はた同じ 難波なる
身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
元良親王後撰集
021今来むと いひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな
素性法師古今集
022吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を あらしといふらむ
文屋康秀古今集
023月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ
わが身ひとつの 秋にはあらねど
大江千里古今集
024このたびは 幣も取りあへず 手向山
紅葉のにしき 神のまにまに
菅 家古今集
025名にしおはば 逢坂山の さねかづら
人に知られで くるよしもがな
三条右大臣後撰集
026小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむ
貞信公拾遺集
027みかの原 わきて流るる 泉川
いつみきとてか 恋しかるらむ
中納言兼輔新古今集
028山里は 冬ぞさびしさ まさりける
人めも草も かれぬと思へば
源宗于朝臣古今集
029心あてに 折らばや折らむ 初霜の
おきまどはせる 白菊の花
凡河内躬恒古今集
030有明のつれなく見えし別れより
暁ばかりうきものはなし
壬生忠岑古今集
031朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに
吉野の里に ふれる白雪
坂上是則古今集
032山川に 風のかけたる しがらみは
流れもあへぬ もみぢなりけり
春道列樹古今集
033久かたの 光のどけき 春の日に
しづ心なく 花の散るらむ
紀 友則
参照日本人と桜?
古今集
034誰をかも 知る人にせむ 高砂の
松もむかしの 友ならなくに
藤原興風古今集
035人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞむかしの 香ににほひける
紀 貫之古今集
036夏の夜はまだよひながら明けぬるを
雲のいづこに月やどるらむ
清原深養父古今集
037白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
文屋朝康後撰集
038忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
右 近拾遺集
039浅茅生の をののしの原 しのぶれど
あまりてなどか 人の恋しき
参議 等後撰集
040しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで
平 兼盛拾遺集
041恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか
壬生忠見拾遺集
042契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波こさじとは清原元輔後拾遺集
043逢ひ見ての 後の心に くらぶれば
昔はものを 思はざりけり
権中納言敦忠拾遺集
044逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに
人をも身をも 恨みざらま
中納言朝忠拾遺集
045哀れとも いふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
権徳公拾遺集
046由良のとを わたる舟人 かぢをたえ
行く方も知らぬ 恋の道かな
曽禰好忠
047八重むぐら しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋はきにけり
恵慶法師拾遺集
048風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
砕けてものを 思ふころかな
源 重之詞花集
049御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ
昼は消えつつ ものをこそ思へ
大中臣能宣詞花集
050君がため 惜しからざりし 命さへ
ながくもがなと 思ひけるかな
藤原義孝後拾遺集
051かくとだにえやは 伊吹のさしも
草さしも知らじな 燃ゆる思ひを
藤原実方後拾遺集後拾遺集
052明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき 朝ぼらけかな
藤原道信後拾遺集
053歎きつつ 一人ぬる夜の 明る間は
いかに久しき ものとかは知る
右大将道綱母拾遺集
054忘れじの 行末までは 難ければ
今日をかぎりの 命ともがな
儀同三司母新古今集
055滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞えけれ
大納言公任拾遺集
056あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
今ひとたびの 逢ふこともがな
和泉式部後拾遺集
057巡りあひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半の月かな
紫式部新古今集
058有馬山猪名のささ原風吹けば
いでそよ人を忘れやはする
大弐三位後拾遺集
059やすらはで 寝なましものを 小夜更けて
傾くまでの 月を見しかな
赤染衛門後拾遺集
060大江山 いく野の道の 遠ければ
まだふみも見ず 天の橋立
小式部内侍金葉集
061いにしへの 奈良の都の 八重桜
今日九重に 匂ひぬるかな
伊勢大輔詞花集
062夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも
世に逢坂の 関はゆるさじ
清少納言後拾遺集
063今はただ 思ひ絶え なむとばかりを
人づてならで 言ふよしもがな
左京大夫道雅後拾遺集
064朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
権中納言定頼千載集
065恨みわびほさぬ袖だにあるものを
恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ
相 模後拾遺集
066もろともに あはれと思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし
前大僧正行尊金葉集
067春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
周防内侍千載集
068心にも あらでうき世に ながらへば
恋しかるべき 夜半の月かな
三条院後拾遺集
069あらし吹く 三室の山の もみぢ葉は
龍田の川の にしきなりけり
能因法師後拾遺集
070寂しさに 宿を立ち出でて ながむれば
いづこもおなじ 秋の夕暮
良暹法師後拾遺集
071夕されば 門田の稲葉 おとづれて
芦のまろやに 秋風ぞ吹く
大納言経信金葉集
072音にきく 高師の浜の あだ波は
かけじや袖の 濡れもこそすれ
祐子内親王紀伊金葉集
073高砂の 尾の上の桜 咲きにけり
外山の霞 たたずもあらなむ
権中納言匡房後拾遺集
074うかりける人を初瀬の山おろし
よはげしかれとは祈らぬものを
源俊頼朝臣千載集
075契りおきしさせもが露を 命にて
あはれ今年の 秋も去ぬめり
藤原基俊千載集
076わたの原 漕ぎ出でて見れば 久かたの
雲ゐにまがふ 沖つ白波
法性寺入道前関白詞花集
077瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ
崇徳院詞花集
078淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に
幾夜ねざめぬ 須磨の関守
源兼昌金葉集
079秋風に たなびく雲の 絶え間より
もれ出づる月の 影のさやけさ
左京大夫顕輔新古今集
080ながからむ 心も知らず 黒髪の
乱れて今朝は ものをこそ思へ
待賢門院堀川千載集
081ほととぎす鳴きつる方を眺むれば
ただ有明の月ぞのこれる
後徳大寺左大臣千載集
082思ひわび さても命は あるものを
憂きに堪へぬは 涙なりけり
道因法師千載集
083世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
皇太后宮大夫俊成千載集
084ながらへば またこの頃や しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき
藤原清輔新古今集
085夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで
閨のひまさへ つれなかりけり
俊恵法師千載集
086なげけとて 月やはものを 思はする
かこち顔なる わが涙かな
西行法師千載集
087むらさめの 露もまだひぬ まきの葉に
霧立のぼる 秋の夕暮
寂蓮法師新古今集
088難波江の 芦のかりねの 一夜ゆゑ
身をつくしてや 恋ひわたるべき
皇嘉門院別当千載集
089玉の緒よ 絶なば絶えね ながらへば
忍ぶることの よわりもぞする
式子内親王新古今集
090見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
濡れにぞ濡れし 色は変らず
殷富門院大輔千載集
091きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき 独りかも寝む
後京極摂政前新古今集
092わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の
人こそ知らね乾く 間もなし
二条院讃岐千載集
093世の中は常にもがもな渚こぐ
あまの小舟の綱手かなしも
鎌倉右大臣新勅撰集
094みよし野の 山の秋風 小夜ふけて
ふるさと寒く 衣うつなり
参議雅経新古今集
095おほけなく うき世の民に おほふかな
わが立つ杣に 墨染の袖
前大僧正慈円千載集
096花さそふ嵐の庭の雪ならで
ふりゆくものは我が身なりけり
入道前太政大臣新勅撰集
097来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
権中納言定家新勅撰集
098風そよぐ ならの小川の 夕暮は
みそぎぞ夏の しるしなりける
従二位家隆新勅撰集
099人も惜し人も恨めしあぢきなく
世を思ふゆゑにもの思ふ身は
後鳥羽院続後撰集
100百敷や 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり
順徳院続後撰集

百人一首の朗読と解説・かるた取りなどを見てみましょう

参考:【百人一首」】左大臣・光永氏の音声による朗読・解説」(CD-ROM版)

【俳句】
和歌の発句(上の句)から派生発展(連歌⇒俳諧⇒俳句)した形式

初句・初五・上五二句・中七結句・座五・下五
●●●●●○○○○○○○●●●●●
五音七音五音
五月雨降り残してや光堂

季語(きご):季節を代表する風物を表す語句(陰暦のため現代の季節とのズレが生じる)

新年
天文初日(はつひ)
初明り(はつあかり)
東風(こち)
朧月(おぼづき)
風薫る(かぜかおる)
五月雨(さみだれ)
十五夜(じゅうごや)
(つき)
(こがらし)
時雨(しぐれ)
地理初富士(はつふじ)
若菜野(わかなの)
残り雪(のこりゆき)
春の海(はるのうみ)
植田(うえだ)
土用波(どようなみ)
不知火(しらぬい)
水澄む(みずすむ)
枯野(かれの)
垂氷(たるひ)
時候初春(はつはる)
松の内(まつのうち)
長閑(のどか)
行春(ゆくはる)
梅雨冷え(つゆびえ)
短夜(みじかよ)
八朔(はっさく)
夜長(よなが)
行年(ゆくとし)
重ね着(かさねぎ)
人事初釜(はつがま)
蓬莱(ほうらい)
汐干(しほひ)
麦踏(むぎふみ)
団扇(うちわ)
更衣(ころもがえ)
送り火(おくりび)
紅葉狩(もみじがり)
蒲団(ふとん)
酉の市(とりのいち)
動物初声(はつこえ)
初雀(はつすずめ)
(かわず)
雲雀(ひばり)
蝸牛(かたつむり)
時鳥(ほととぎす)
(かり)
鈴虫(すずむし)
牡蠣(かき)
千鳥(ちどり)
植物(だいだい)
福寿草(ふくじゅそう)
(うめ)
土筆(つくし)
紫陽花(あじさい)
青葉(あおば)
(きく)
(くり)
茶の花(ちゃのはな)
寒椿(かんつばき)
例句初春
けぶり立てるも世間むき(一茶)
手枕に
身を愛すなりおぼろ月(蕪村)
五月雨
降り残してや光堂  (芭蕉)
岩鼻や
ここにも一人の客 (去来)
宇治橋の
神や茶の花咲くや姫 (宗因)

参考:【松尾芭蕉「奥の細道」】 左大臣・光永氏の音声による朗読(CD-ROM版)


【吟詠】
日本・三部作(丘 灯至夫)および俳句「夏草や」(松尾芭蕉)を聴いてみましょう(吟詠中でも「吟題」をクリックして詩文を表示できます)

1.日本を愛す(丘 灯至夫)
2.日本讃歌(丘 灯至夫)
3.日本人 (丘 灯至夫)
4.奥の細道(平泉の一節) (松尾芭蕉)

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